*朱音 side*


「ちょっと竣!」


竣の机をバンッと叩く。


「…何。」

「何じゃない! 何!? 詩乃と喧嘩したって!」

「…何もねぇだろ。そのまま。」

「なんでっ…なんで…!! バカじゃないの!?」

「…じゃぁ否定すりゃよかったのかよ。」

「そうでしょ! 否定もしないで何してんの!?」


ふんぞり返る竣。


「…俺は、キスしたと思ってねぇ。だから否定もしない。」

「ってかさ、萌亜の言うチューってどこ?」

「…多分鼻。」


鼻…


「鼻!?」

「鼻。」

「そりゃぁチューには入らないわぁ~…。」

「だろ?」

「でもさ、詩乃の事怒鳴り付けんのはよく無いって。」

「は?」

「さっき詩乃からメール来た。全部説明してくれたけど…。
詩乃は、ちゃんと家に帰ろうとしてたんだよ?」

「じゃぁなんで帰って来なかったんだよ。」

「…殴られたんだって。」

「は!?」


私は知ってる限りの事を話した。


「はぁ…。なんで詩乃はそれ言わなかったんだよ…。」

「怖かったんじゃん? 女の子だったら誰でも怖くて言えないよ。
ま、私は余裕だけどー!」

「お前男だもんな。」

「女!!!!!」


竣、ちゃんと仲直りしなさいよ。

アンタら本当に…バカップルだけど、不器用カップルでもあるんだから……――。