「ん――……。」


目を覚ますと、そこには誰もいなかった。

起き上ろうとした時…


「っ…!」


おなかに痛みが走った。

起き上るのはやめて、ベッドに横になり直すと、いろいろと思いだした。


あぁ…私…。


藍クンに殴られたんだったかしら…。


「詩乃チャン?」


ドアが開いて、藍クンの声がした。


「藍…クン…。」

「よかった、目、覚めたんだね。」

「…なんで…。」

「なんでって…何が?」


目の前にいるのは私の知る藍だ。


「なんで…私を…。」


でも、あのときの藍は、私の知る藍では無かった。


「あぁ…。 うん、あのままだと帰っちゃいそうだったから。」

「帰っちゃいけないの?」

「うん。 言ったでしょ?」


そう笑う藍が不思議と怖かった。



「眠っててって。」

「どうして? どうしてなの?」

「…俺の目的を果たすためには、こうするしか無かったんだ。」

「目的……――?」

「そう。」


そう言う藍の目は、どこか寂しそうだった。