「…ゴメンナサイ、竣…。
こんな事になって…。」


私は竣が今日寝るベッドに静かに座った。


「いや…。それより、アイツ、詩乃の兄貴なんだろ…?
なんでんな怯えてんだよ。」

「……私…。」

「…今は、いい。

自分の部屋にいろ、詩乃…。」

「…ええ…。」


私は竣の部屋を出ると、自分の部屋には行かず、お兄ちゃんの部屋へと向かった。


お兄ちゃんは、昔は優しくて…今も優しい事は変わらない…。

でも、1つ…変わってしまった…。


昔は、男の子が家に遊びに来ても、なんとも無かった…。

でも、いつしか、家に遊びに来た男の子を追い返したり、酷い事を言ったりするようになってしまった…。


-コンコンッ

「はい。」


部屋の扉をノックすると、お兄ちゃんの声がした。


「お兄ちゃん…。」


部屋に入る。


「詩乃。」

「…お兄ちゃん…。」

「なんだ?」

「…もう、竣には構わないで…。」

「詩乃…。」

「私…彼が好きだから…何が何でも諦める気は無いわ!」


私はお兄ちゃんの部屋を飛び出し、長い廊下をただひたすら走った。


「はぁっ…はぁっ…。」


息が切れて、徐々に呼吸が苦しくなる。

私の足は自然とある場所へと、向かっていた。