竣にお兄ちゃんが帰って来る事を伝え忘れて…竣の部屋へ行くと、もう遅かった…。


「詩乃!」


と言って私に抱き付いて来るお兄ちゃん。


「離して…お兄ちゃん…。」

「そういや、詩乃! あの男はなんだ!」


私から離れると、竣を指さし言った。


「俺は…――。」


竣が答えようとすると


「貴様になど聞いていない!」


と竣を睨んだ。


「…彼は、板垣 竣…。私と同い年で…同じクラスの人よ…。」

「同じクラス…。
そんな奴がなんで家にいる?」

「……家に…遊びに来てくれてるからよ…。」


私は静かにお兄ちゃんと距離を取った。


「なんでだ?」

「…それは…彼が…。」


体が震える。


「私の…彼だからよっ…。」


言ってしまった…。


「…本当か、それは…。」


怖くて、お兄ちゃんの顔を見れない。

私はただ、体を震わせてうなずく事しかできなかった。


「…お兄ちゃん、出て行って…。」

「……―――。」


お兄ちゃんは、ただただ黙って、部屋を出て行った。


「詩乃…?」