「…ただいま。」


大きな扉を開ける。


辺りはシ…ン…と、静まり返っていた。


「…誰もいねぇの?」

「いえ、いるはずよ。

…皆、冷たいだけよ…――。」



【ただいまぁ~♪】

【おかえりなさいませ、詩乃お嬢様!!】


温かい、メイド達の声。


【ただいま、お父様、お母様ッ!】

【おかえりなさい、詩乃。】

【手を洗いなさい、詩乃。そしたら、父様と遊ぼうか。】

【…うん、お父様ッ!】


まだ、皆優しかった…―――幼き頃の事。


「…あんま暗く考えんなよ、詩乃。」


…竣…。
あなたがこの場にいてくれるだけで、とても安心するの。

こうして、隣にいてくれるだけで、とてもホッとするの。


「…ありがとう、竣…。」

「んじゃま、もう午後の6:00だし!
詩乃の部屋でも行かせてもらうか。」



本日、夏休み第1日目。

そして今は、AM6:00。


「その前に竣の泊る部屋に行かないと。」

「は?」

「その…荷物置いたりとか…。」

「あぁ、ん。荷物置いたりね。」



私…何か言ったかしら…???