…なんとなく、気が引けてしまう。
本当は逃げてはいけないのだけれど…。

分かっていても、体が拒否する。


「詩乃。」

「竣…。」

「待ってたのか…。」

「え、ええ。」


ポンポン、と私の頭を撫でる。


「あ、そうだわ、竣。」

「何?」

「…その…夏休み中、竣のお家に行ってもいいかしら…?」

「は…。」



長い長い沈黙。



「…なんで。」

「…私、家に帰りたくないのよ…。

ほら、お父様とお母様の事、話したでしょう?」

「あぁ。」

「だから…泊めて欲しいのよ…。」


あら…私、変な事を言っているかもしれないわ…。


「…本来なら全然それで構わない。

でも…そう言う理由なら、駄目だ。」



…やっぱりそうよね…?
迷惑…よね。



「だから。」


私の頭に手を置き、竣は静かに言った。



「俺が行ってやる。」



……………………――――――――――――――――え?



「竣…?」