「そう…。」

「朱音…? どうかしたの?」


私が声をかけると、朱音は俯いて大丈夫、と言った。


「…じゃぁ私、席に戻るね。」

「ええ…。」


その時の朱音は明らかに様子がおかしかった。


「ねぇ、雅樹ぃ。」

「なんだよ、南。っつかキモ…。」

「うるさいぃ。

雅樹、なんか朱音チンに言った…?」

「え?」

「私も思うわ…。なんだか朱音の様子、おかしくない?」

「確かになぁ。俺、ヤベェかな…?」

「僕知ぃ~らなぁ~い☆」


と、南も席に戻って行った。


「…後で聞いてみるわ。」

「ええ、その方がいいと思うわ…。」

「あり、そーいや竣の奴、どこ行った?」

「…さぁ…。」


そう言えば、竣の姿が無い。

普段は雅樹や南といるのに…。珍しいわね…。


「ねね、詩乃。」

「何? 結衣。」

「どうしたの? 朱音…。」

「それが、私たちにもよく分からなくて…。」

「…そうなんだ。」



ゴメンナサイ、朱音。

この時、あなたの心の声に、気付いてあげられなくて…。



「それでは、テストを始める。」



シャーペンの音が木霊す。