「今日の走り、すごかったわ!」

「マジ? 一瞬ヒヤッとしたけどな~。」

「私もしたわよ! 竣ったら余裕かまして走ってるんだもの…。」

「ちょーっと気を抜いただけだし。」

「何がちょっとよ! 全然ちょっとじゃなかったわ!!
あのときだって…!!」


私が話し始めると、竣は話を遮るように、私の髪を触って言った。


「別にいいじゃん、勝ったんだし。」

「……。」

「な?」

「…ええ。」


竣といると、どうも調子が狂う。
でも、そんなの今に始まったことじゃないのだけれど…。


「あ、そうだわ! 下に降りましょう?」

「なんで。」

「だって…下では後夜祭をやっているし…。」

「……。」


なんで…急に不機嫌なのかしら…。

-ドォォォォォンッ


「わぁ…!! 花火…!」


キレイ…。


「…私、こういうキレイなもの、全部…竣と見て行きたい…。」

「詩乃…。」

「…全部全部、思い出にしていきたい…。」


そう言って竣の方を向いた。


「……。」


時が止まったようだった。