いつもより早い時間に家を出ると心にもゆとりができる。
すごく清々しい気持ちになるのは……、


なんでなんだろう。


「お~い!!桃~っ!!」
誰かが走って近づいてくる気配。
この声は……。

「穂稀!!」
せっかく久々に一人でのんびりできると思ったのにぃぃ。
振り向くと彼が息を切らしていた。

「やっと、追いついた」

「今日は早いのね。珍しい~」
彼に構うこともなく私はスタスタと歩き始めた。

「最近、お前冷たくねぇか?」

「そんなことないですよ~ただ」

「ただ?」

「あんたと一緒に居ると、いろいろとめんどくさいのよ。昔とは違うの……」

「なんだよ、それ!意味わかんねぇーよ!!」


「……放して」


彼に掴まれた左手首がヤケに重く感じていた。

「放さない。お前が俺の話を聞いてくれるまでは……」

彼に背を向けたまま真っ正面を見る勇気が無かった。

「話?」


「俺はずっと……お前が好きだった」

嘘……。

「冗談はやめてよ」

「冗談なんかじゃない!だから……」




「……ごめん」




左手がゆっくりと放たれた同時に走り出す。頭の中は真っ白で何も考えられなかった。