「なんだよ、あいつは!自分の姉を見捨てるとは薄情なヤツ……」

「私がイケないのよ。遅刻しそうになったのも私のせいだし、昔から鈍臭いんだよね」

「……桃と比べるからだよ、男っぽい性格だからなぁ。ほれ、これで最後だ」
散らばった絵の具を手に取ると桜に手渡した。
彼のぬくもりを感じる使いかけの赤色の絵の具……。

「桃が聞いたら怒りそう」
それは掌の中に静かに収まる。

「桜は桜でいいとこあるんだし……気にすることねぇって」

「ありがとう」

二人は学校に向かって歩き始めた。





「どういうつもりだ?」

「なっ何よ、いきなり」

私と穂稀は同じ三年A組、桜はD組なんだよね。これも『腐れ縁』と言うのべきか……。

「朝のことだよ!」

ああ……あれね。
因みに気になっている人もいると思うのでお知らせしておこう。あの後、間一髪ギリギリセーフで間に合ったのだ!さすがはわ・た・し!

「もしかして怒ってる?」
せっかく桜と二人きりにしてやったのに──。
何で怒られなきゃいけないのよ。

「……お前が先に行くからいけないんだよ」

「だってそれは──」
まだ彼は桜の気持ちを知らない。だからこそ私は言葉を詰まらせた。

「久しぶりに桃と一緒に登校できるって思ったのにな」

えっ!?
今、何て……?


キーンコーン、カーンコーン……。


チャイムは二時間目の始まりを静かに告げた。