僕は弱い男だから、ふられたときは死のうかと思いました。本当に死のうと思って、マンションの屋上に上ったんです。僕は本当に死のうとしていました。

「自殺って、どうなの?」

そんなときに限って、有紗の言葉を思い出すんです。僕の兄が自殺したときの、有紗の反応を。

そのとき僕は思いました。ひょっとして僕は、自殺家系なんじゃないかと。それなら自殺してもしょうがないんじゃないかと。

「自殺なんて、ばかじゃん」

また有紗の言葉が蘇る。僕をふった、有紗の言葉。ばかでかわいい、有紗の言葉。

結局僕は、自殺できませんでした。