LAST-LIFE

耕助もまた、勘蔵としての生活の中で自分を見失いつつある。

時折尋ねてくる昔の家来。
用件はいつも同じ。

最近では、香が不思議に思ってどんな用件だったかきいてくるようになった。

本当は隠す必要もないことだけれど、周りと全く異質な存在として香に認識されるのが嫌だ。

あくまで一人の僧として香との関係を保っていたかった。


香が愛しい。


入れ替わった時には、勘蔵の記憶にあっただけだった。
だが、今では耕助自身がそう思っている。

『身も心も勘蔵か・・・』

ため息を吐くと、香が心配そうな顔でどうしたのか聞いてきた。

香のそんな表情を見ているとため息を吐きたくなる。

結局はため息を我慢して言葉を濁すのだけれども。

「経をあげてきます。」

香の目の前から去りたいと思った。
下手な心配を掛けぬよう、隠れてしまいたかった。