「本当に行ってしまうのですか?」

長髪の美女―
母が言った。

「母上。私は行きます。父上亡き後は兄上がおります。」

母はうつむく。

「お前の兄・・・項宥は病気がち。お前を次の帝にという声も少なくありません。」
「いえ、私は・・・。もしもの事があれば弟―総鶴もおります。」
「ですが・・・」
「いいのです、母上。」

門を出ていく。
母は顔を隠して泣いている。

「私もこれからは隠者か。」

晴れた空に呟いた。

流音寺まで五里程。
とてつもなく遠い気がした。