「座りなさい。」

トメに促され、耕助は座る。

「すぐに始めるよ。」

トメは何か呪文のようなものを呟き始める。


「僧・・・じゃな。」
「僧?」
「京都の僧、名前は堪蔵。・・・あなたの守護霊であり、前世じゃ。」
「前世・・・?」

ワケがわからなくなった耕助の代わりに祖母が聞く。

「夢を見るそうじゃが。」
「霊が言っておるには・・・命の危険が迫っているようじゃな。」
「危険?」
「魂を助けるために生前の自分と場所を交替する・・・わかりにくいがそんなとこじゃなぁ。」
「夢の意味は?」
「堪蔵の最後の記憶じゃろう。憑依して耕助くんの魂を体から弾き出し、過去の自分の所へ飛ばそうとしとるようじゃな。」
「・・・よくわかりません。」
「まぁ、悪い霊ではない。従う他ないな。」
「トメちゃん、堪蔵がいた寺は?」
「京都の流音寺じゃな。それ以上はわからん。」
「そうか・・・。ありがとうよ。」

祖母は立ち上がる。耕助もつられて立ち上がる。

「耕助くん。」
「は、はい?」
「運命をうけいれるのじゃぞ。」
「・・・はい。」

耕助が返事をするとトメはほほえんだ。
耕助は祖母について出ていった。