「終わりだ。」

どこかで声が聞こえた。
目を見開くと目の前に冷酷な笑みを浮かべた男がいた。

猛獣を彷彿とさせる釣り上がった目。
口の両端は耳の高さまで持ち上がっているようだ。

相手の頭をみると髷が結ってあった。

『ちょ、ちょんまげっ!?』

口で言うより先に男が消えた。

目が覚めたのである。

「耕助っ!遅刻するよっ!」

母が一階から呼んでいる。
時計に目をやる。

8:00

「やばっ!」

ベッドから飛び出て制服を着る。
階段を駆け下りる。

「母ちゃん朝飯要らない!」
「学校で食いなっ!」

母が何かを投げ付けてきた。
手の中をみるとアルミホイルに包まれたおにぎりがあった。

「ありがと!」

そう言いながら家を飛び出し、自転車に飛び乗った。

予想外に暑かった。