風に吹かれて音をたてる竹で、男の言葉は掻き消され、聞き取れなかった凜。 男はまた小さく笑って凜に背を向けて歩き出した。 『…あっ…待って!!』 「「…。」」 凜の呼び止めに、男は立ち止まった。 『助けてくれて…ありがとー…。』 「「…どーいたしまして。」」 一言だけ言って、再び歩きだす男に、凜は少し焦って叫ぶように言う。 『あのっ…!!名前、教えてくれませんかっ!?』 「「…さっき見たことと、俺の名前、他の誰にも言わへんって…約束できる?」」 『えっ…?う…うん…』