走って、小さい子を抱きかかえた。
でも、車は止まらなかった。
―――急に、時間が流れるのが遅く感じた。
…あ……死ぬんや、あたし。
走馬灯ってやつかなー…これ。
おとーさん…
おかーさん……
小さい頃のあたしもいる…
いつも仲いい2人で…あたしも幸せやった。
椎奈…言い合いばっか…
あほなことばっかしてたけど…
その絡みがめっちゃ楽しかった。
先せ……なんで出てくんねん。
ボツ。
…おばーちゃん。
おばーちゃん残して…死ぬん?
…あかんやんっ
……死ねへんやんっ!
それに…ここで諦めたらこの子まで…
―――ごめん、おばーちゃん。椎奈。
この子だけは…助ける。
ゆっくり流れる時間の中、あたしは腕を精一杯伸ばして、小さい子を車の範囲から遠ざけた。
―――今まで…
ありがとー。
…自然と意識が遠ざかっていった。
このままぶつかる…痛いんかなー。
おとーさんとかおかーさんに会えるかなー。
そんなことを考えてると、頭上から声がした。
「見ーーっけ☆」

