かなこの木

「かなこの木って…私が書いたやつじゃん…」



「おぉ、あったあった!」

銀爺さんが右手に何かを持って帰って来た。



「カナ、その本が読みたいか?」

「うん」

「その本はな、カナが選んだんじゃない。本がカナを選んだんだ」

「へ?」

「まぁ、今にわかるよ、ホレ!」


銀爺さんが私の鼻スレスレに差し出したのは、古くて小さくて汚い鍵だった。


「何、この鍵」

「本を開く鍵だよ」

「これが…?」



差し出した私の手の平にポトンと置かれた鍵は、本当にチンケな鍵だった。