かなこの木

お父さんが仕事から帰ってくる前に少しだけ本が読みたかった。


「ただいま〜」

「お帰り、ご飯は?」

「いいや」

「また本!?」

「あっお母さん!!」



私は本を差し出した。



「この落書き覚えてる?」



お母さんは本を見ると眉間にシワを寄せた。


「あら、懐かしい!!図書館で見つけたの?でも可奈子、図書館の本にまで落書きしてたの!?」

「わかんない、覚えてないの。お父さんが昔借りたのかな?」

「んも〜。お父さんに似て本当、本が好きね!」



お母さんは呆れたように「銀爺さんに謝りなさいよ」と言ってリビングに帰って行った。