後部座席は革が使われており、高級感が溢れている。
運転席にはスーツを着た運転手らしき人が乗っていた。
『とりあえず出して。』
後から乗り込んで来た國崎が指示を出すと、車は発進した。
『…』
気まずい…
いや、小春が気まずくさせているのかも知れない。
優さんは流れる街角を楽しそうに眺めて
空気の重さなんて気にもとめて無い様。
『あ、あの…何で学校に?』
小春は、短い言葉に色んな意味も込めて聞いた。
『昨日…酔ってたから、
ママさんに家聞いて、アパートまで送ったんだけど…
着いても起きないから、仕方なく鍵を開けて入らせてもらいました。
そしたら、
壁に制服が掛けてあって、僕の母校の高校のでしたから、ちょっと気になって。』
視線を窓の外へ向けたまま答えた。
はぁ…
どんだけ酔ってたんだ…
家、入ったんだ…
学校、来ちゃったんだ…
バレちゃったんだ…。
小春は、色んな事が頭を一気に駆け巡って、がっくりと肩を落とす。
『まずかった?』
それを見てか、
優さんは心配そうに顔を覗き込む。
『いえ…ただ…
…内緒にしてくれます?
夜の仕事してる事。』
『あぁ、誰にも喋らないよ』
優さんは快く約束してくれた。
秘密にしてくれると。