「来いよッ」 大きな鞄に腰掛けて待つ躰に指令する。 もたつく動作にまた、声を荒げた。 「早くしろよッ!」 思わず腕を掴みそうになった手が止まる。 ───触れたく無い。 「は、早くしろって言ってるだろッ!」 ずりずりと、サンダルが忙しく鳴る。 70を越した人間に、こんな言葉しか吐けない自分にも苛々した。