「あ、あの、…‥郷原さん?」 ふっくらと、柔らかな口唇が俺の名を囁く。 綺麗だ。 堪らなく。 「俺が婚約者と別れた理由はね、君───小笠原さんのせいなんだよ」 錯乱したわけじゃない。 ・・・・・・ 俺はそうしたくて、口から溢れ出す嘘を止めなかった。