───…‥ 23年前。 サムイ、サムイ、銀の雪が積もる冬。 零下の世界。 煌煌と灯る石油ストーブが眠気を誘う。 「おなか…‥しゅいたぁ…‥」 涙の跡がカサカサの頬に張り付いたまま、何度も呟いた言葉。 戸棚のパンも、テーブルの上のバナナもお菓子も、冷蔵庫の中のケチャップや味噌、パン粉───全部食べ尽した。 もう、口に出来る物は何も無い。