時折、美沙緒がそんな俺に同情し、おにぎりを部屋まで届けてくれた。 「海苔が無かったから塩むすびだけどね」 味よりも何よりも、温かい真っ白なおにぎりが美沙緒の気持ちを伝えた。 「かあさん、いつ帰って来るのかなぁ」 小学校へ行きだして間もない頃、たまらず美沙緒に聞いてみた。 塩むすびの味を頬張りながら、あの頃の俺はまだ恋しい人の帰りを待ち詫びていたのだ。