愛人が心配そうに、私を見てくる。


「だって、せっかく名前があるんだよ?大切にしようよ」


愛人に向かって、にっこり笑った。


「ふっ」


うわっ、鼻で笑われた。


「好きにすれば」


諦めたように、でも一瞬私に笑って、愛人は屋上から去った。


「笑った」


なんだ、笑えるんじゃん。


冷たい表情しかしないと思ってたのに。


マー君


ちょっと、かわいすぎたかな?


でも、少しは愛人に近づけた?


だったら嬉しいな。


だって婚約者って名前だけでつながる関係は、やっぱり悲しいから。