「ちゃんと名前呼んでよ。あんたはイヤ」


「別に名前呼ぶほど、あんたと仲良くするつもりはないけど?」


「じゃあ、覚えて。美結って」


「覚える必要もない」


「なんでよ。名前には、ちゃんと意味があるんだよ。パパとママが一生懸命考えてつけてくれたんだから」


「俺には、その意味がわからない」


愛人はそう冷たく言い放つと、ドアに手をかけた。


「愛人!」


「だから、呼ぶなって言ったろ?」


冷やかな視線と声が飛んでくる。


「じゃあ、マー君ならいい?」


「はっ?」


愛人の目が、大きく開かれた。


「愛人の最初の文字を取って、マー君」


「あんた、頭大丈夫?」