「だからなに?別に俺がくじ引かなかったから、席が隣になったわけじゃないじゃん」


「そうだけど・・・」


「本返してくれる?あと少しで読み終わるんだよね」


「いや」


「なに子供っぽいこと言ってんの?早く返しなよ」


手を差し出してくる。


「ほら。返せよ」


私を睨みながら、さらに手を私に向かって出してきた。


「うっ・・・」


そんな怖い顔しなくてもいいじゃん。


本を返すと、愛人は立ち上がってドアの方に歩いて行く。


「待ってよ」


「なに?」


「名前。私、美結って言うの」


「だから?」