ほんとに本を読んでいるのか、それともただ文字で目を追ってるだけで文章が頭に入ってないのか。


でもページをめくる顔は真剣だから、ちゃんと読んでいるんだろう。


「美結、これあんたの親でしょ?」


「ん?」


沙奈が広げた雑誌に目を通す。


水野沙奈。


私の友達。


いつも髪をひとつに縛ってて、目がくりくりしててかわいい女の子。


沙奈のお母さんは茶道の先生やってて、沙奈もたまにお点前をやるらしい。


この前着物姿の写真を見せてもらったけど、沙奈は着物がとっても似合ってて和風美人って言葉がぴったりだった。


でも本人は、あまり茶道が好きではないらしい。


そんな大人しいことより、外で運動してた方が楽しいっていう活発な子。


それでもお母さんに茶道の先生を継いで欲しいって言われてて、最近そのことでよく喧嘩をするって言ってた。


そのたびに、自分の進路は自分で決めると大声で叫んでるそうだ。


「うん。私のパパとママ」