静かな部屋に響く、時計のカチッカチッという音。


その音を耳にし、私はベットの上で膝を抱えながら、ずっと電話を握りしめていた。


日本時間の朝8時に始まった手術。


今は10時で、2時間たったことになる。


難しい手術だから、長時間になるかもしれないと言われていた。


「愛人・・・」


そっと愛人の名前を口にする。


大丈夫だよね?


不安で押しつぶされそうになる心を、電話をギュッと握りしめることで落ち着かせようとする。


手術が終わったら一柳さんからかかってくる電話。


きっと第一声は、手術は成功した、だよね。


「美結」


トントンと部屋のドアを叩く音と、ママの声に、ハッと顔を上げる。


「ママ・・・仕事は?」


「今日はお昼で終わりだったの」