ブスっとした愛人の表情に、思わず笑いそうになる。


「胸の音聞くよ」


診察が終わるのを、少し遠くの方で待つ。


「ん、いいよ。歩きに行っておいで」


その言葉に、ホッと胸をなで下ろす。


数日前、愛人は軽い発作を起こした。


実は年が明けてから何度か発作を起こしていて、病気が確実に愛人の身体を蝕んでいくのが目に見えてるようで、ほんの少しだけ怖かった。


それでも今日は歩いてもいいって言われて、なんだか少し安心した。


「10分か15分くらいだよ。あまり遠くには行かないこと」


「分かった」


先生の言葉に愛人がうなづいて、ベットを下りる。


「美結、廊下で待ってて。すぐに支度する」


「うん」


廊下でしばらく待っていると、洋服に着替えた愛人が姿を現した。


続いて、笠原先生も。