愛人の背中から放たれていた拒否感が、だんだん薄れていく。


「マー君、生まれてきてくれてありがとう。私と出会ってくれて、ありがとう」


「美結・・・」


もぞもぞっと動いて、愛人が私の方を見た。


「いっぱいいっぱい、ありがとう」


「美結!」


ぐっと引き寄せられて、気が付いたら愛人の胸の上に倒れ込んでいた。


頭に手を回され、そっと何度も髪をなでられる。


「俺は、生まれてきてよかったんだろうか?」


「マー君が生まれてくれなきゃ、私はこんな思い知らなかったよ」


「こんな思いって?」


「温かくて、優しくて、それでもたまに苦しくて。きっとこれが恋なんだね」


ドクンドクンと静かに鳴る愛人の心臓の音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。


「ありがとう、美結」


小さな小さな愛人の声が、私の耳に届いた。