「知りたい?」


「そんだけ言うんだからな。知りたい」


スッと手を伸ばして、愛人が私の髪に触れた。


「今日はね、マー君の生まれた日」


愛人がハッとしたような表情になった。


「まさか、忘れてた?」


「いや。美結が知ってることに、驚いた」


「おば様にね、教えてもらったの」


「そう」


私の髪を触っていた愛人の手が布団の上にゆっくりと下り、それから私から視線を外した。


「あのね、マー君。眠っちゃってもいいんだけど、聞いてくれるなら私の話し聞いてね」


愛人からの返事はなく、それでも私はゆっくりと話し出した。


「マー君は自分の誕生日嫌いかもしれないけど、私は大好きな日なんだよ?」


私に背を向けてるから、愛人がどんな表情をしてるか分からない。


「だって、今日この日にマー君が生まれてくれなかったら、私はマー君に出会えなかったし」