なんだよ、今更と言って、龍守は教科書に目を戻した。


「これは大切なことなんだよ?家が会社やってるからとか、そんなんで人生決めちゃいけないんだから」


「あのさ、どこで何聞いてきたか知らないけど、俺は大丈夫だから。父さん超えるくらいの、大きな成果挙げてみせるし」


教科書からは目を離さないけど、力強くそう言った龍守。


「そっか。龍守だもんね。きっとパパを超えられるよ」


「だから姉ちゃんは、自分の幸せだけ考えてればいいじゃん」


最後の方は、声が小さくてよく聞こえなかった。


それでも、龍守が私のこと考えてくれてるってことはよく分かって、なんだかすごく嬉しくなる。


「龍守~」


「なに?」


「ありがとう」


「別に。だいたい姉ちゃんに会社任せたら、それこそ経営破綻しそうだし」


フッと、鼻で笑う龍守。


うわ~ヤな感じ。


なんか、ムカつくんですけど。