「眠ってしまいましたか」


「はい」


病室に入って来た一柳さんが、愛人の様子を覗いて静かに優しい笑みを浮かべた。


「疲れちゃったかな?」


「少し、疲れたかもしれませんね。最近は病室から出たことなかったですから」


「うん」


「今日はもう帰られますか?」


「うんん。明日も来るねって約束してから」


「そうですか。では、紅茶でも淹れますね」


病室についてる小さな電磁調理器のスイッチを入れて、可愛い小さな白い鍋でお湯を沸かす一柳さん。


ねえ、愛人。


いつか二人で、綺麗な青空の下を思いっきり歩こう。


だから今は、病気を治すことだけ考えて。


辛くても苦しくても、私がずっと傍に居るから。


治ったら、いっぱいデートしようね。