「んっ・・・」


いつの間にか眠ってしまったみたいだった。


布団に沈んでいた頭を、ゆっくりと持ち上げる。


「えっ?」


握っていた愛人の手が動いて、急いで愛人の方を向く。


「マー君・・・」


少しだけ笑った愛人を見て、思わず泣きそうになる。


愛人の手が私の手を離れて、酸素マスクを取ろうとする。


「取っていいの?」


「取って」


マスク越しではっきりと言葉は聞き取れなかったけど、久しぶりに聞く愛人の声だけはちゃんと耳に届いた。


心地よい、愛人の声。


酸素マスクを取った愛人は、ホッと短く息を吐いた。


「誰か呼んでくるね」


「いい」