でも、忘れられないんだ。


美結の声も、体温も、泣き顔も、あの笑顔も。


マー君好きって、大好きって、そう言う声が今も耳に聞こえてくる。


ありえないのに、美結の温かさを感じるんだ。


「んっ・・・」


ふわっと、意識が浮上する。


なんだ、死んだんじゃないのか。


静かな病室には、ベットの隣の本棚の上に置いてある置時計の音がカチコチと響いていた。


「22時か」


酸素マスクがウザったい。


点滴をされていない手でそれを取ろうとしたけど、なぜか腕が動かない。


「なんだ?」


右腕に目を移すと、俺の手をギュッと握り、ベットに頭を凭れさせて眠っている美結の姿があった。


「美結・・・」


「マー君」