「あっ」


気付かなかったけど、意外に時間は過ぎていた。


パパとママには、受験の帰りに愛人のところに行ってくるとは言ってある。


そろそろ帰らないと心配するよね。


でも、愛人が目を覚ますまでは傍に居たい。


「私が、お家までご連絡いたしましょうか?」


傍に居たいと我が儘を言う私に、一柳さんが優しくそう言ってくれた。


「いいの?」


「ええ。ただし、ご両親の許可を貰えなかったらお帰りください。もう外は暗いですから」


病室の窓から外を見ると、見事にもう真っ暗だった。


「はい」


素直にうなずいた私に、電話をしてきますと言って一柳さんは病室を出て行った。


「早く起きてよ、マー君」


眠ってる顔じゃなくて、あなたの笑顔が見たい。


美結って呼んで。