「愛人ね、言ってた。私のこと好きって思うと、温かい気持ちになるんだって。種類は違うかもしれないけどきっと、おば様にだって思ってるはずだよ?」


「そんなこと・・・」


「おば様だって、心のどこかで感じてるでしょ?温かいの、すっごく」


固い表情を崩さないおば様に、にっこり微笑む。


「それに、こうやって頬に手を当てるとちゃんと体温感じるでしょ?人の体温って、ものすごく落ち着くの。だから、抱きしめるって大切なんだと思う」


「美結さん」


おば様の表情が、少しずつ少しずつ柔らかくなる。


「愛人は生きてる。おば様から生まれて、病気でもちゃんと生きてるの。感じて、愛人の体温。抱きしめてあげて」


そっと頬からおば様の手を外す。


「まだ、間に合うかしら?私のこと、母親だって思ってくれる?」


今にも零れ落ちそうな涙を溜めて、おば様が小さく呟いた。


「大丈夫だよ。愛人、待ってるから。独りじゃないよ、おば様。私が居るから」


「ありがとう」


ポツンと、おば様の目から流れた涙がソファーを濡らした。


「大丈夫だよ、おば様」