「手紙、ですか?」


一柳さんは少し不思議そうな顔をして、私が差し出した封筒を受け取った。


「読んでくれるか分からないけど、でも少しは伝わるかなって思って。私はマー君の傍にいるよって」


「そうですか。渡しておきます」


一柳さんは笑顔で受け取ってくれた。


「手紙ってなんか古臭いですよね」


「そんなことありません。心がこもっていていいと思いますよ」


病院は基本ケータイ禁止だから、メールは出来ない。


というか、私は愛人のケータイの番号を知らない。


もちろん、メールアドレスも。


最初に会ったときは愛人と上手くいってなかったし、それからもなぜかお互いの口からケータイという言葉は出なかった。


でももし知っていたとしても、私はメールじゃなくて手紙を書いていたと思う。


だってメールはいつか消えるでしょ?


手紙は、無くさない限りいつまでも手元に残る。


愛人に今必要なのは機械的な文字じゃなくて、人の温かみがあるものだと思うから。