一柳さんは困った子ですとも言うような顔で、ため息をつく。


「一柳さんが言ってくれたら、マー君に早く会えるかも」


「そう思いますか?」


「はい。だってマー君は、一柳さんには勝てないでしょ?」


「はい。その通りです」


お互いの顔を見合わせて、クスッと笑ってしまった。


「じゃあ、また明日来ます。さようなら」


「お待ちしてます」


ペコリと頭をさげて、階段を下りる。


愛人が入院してる病院は大きな大学病院で、最初は病室まで行く道や外に出る玄関までの道をよく間違えていた。


最後の階段を下りて、玄関までの真っ直ぐな道を歩く。


「美結さん」


喉渇いたななんて思いながら歩いていると急に声をかけられて、慌てて声の主を捜す。


「おば様?」


大きな窓から差し込んでくる夕日に顔を半分隠されてるけど、私の少し前には愛人のお母さんが立っていた。