不謹慎なのは分かってる。


でもこれを聞かないと、愛人が生きてるって実感出来ないから。


怖いんだ、私。


愛人が居なくなるのが。


毎日病院に来る私の相手は、一柳さんがしてくれる。


今日学校でこんなことがあったとか、とにかく何でも話す。


私の話を、一柳さんが愛人に伝えてくれるから。


ほんとは会って直接話がしたい。


でもそれは、病室の一枚のドアで阻まれてしまう。


壁一枚、たったそれだけなの。


近いけど、すごく遠い距離が私と愛人の間にはある。


「今日はもう帰ります」


「では、下までお見送りいたします」


「大丈夫です。一柳さんはマー君の傍にいてあげてください」


「よろしいですか?愛人様に、美結様に会うように言っておきますので」