「マー君はずるいよ。自分のことばっかり」


「美結様」


「短い間でもいい。傍に居たいの。もし私が一人残されても、どんなに泣いても、前を向いて生きてくもん。それより、今拒否される方が辛いよ」


ギュッとスカートを握りしめた手に、一柳さんの手が重ねられる。


「美結様は優しい方です。そして、愛人様も」


「一柳さん・・・」


「きっと生きてくれます」


一柳さんが優しく微笑む。


「美結様は、美結様が思った通りのことをしてください。きっと美結様の心は、愛人様に届くはずです」


「分かってくれる?」


「はい」


涙で濡れている目を、手の甲で拭う。


「私、マー君に生きて欲しい。会ってくれないと思うけど、毎日病院来てもいい?」


「はい。お待ちしてます」


一柳さんが頬笑みながらうなずいてくれる。