「美結様、大丈夫でございますか?」


どれくらい時間がたったんだろう?


聞き覚えのある声が聞こえて、私は顔を上げた。


「一柳さん・・・」


顔を上げた先には、椅子に座った私と目線を合わせるようにしてしゃがみ込む一柳さんの姿があった。


「マー君」


「大丈夫です。今は落ち着きを取り戻して、眠っております」


呟くようにその名前を口にすると、優しく微笑んで今の愛人の状態を教えてくれた。


「美結様、お家までお送りいたします。立てますか?」


スッと手を差し出してくれる。


でも私は、その手を掴むことが出来なかった。


「マー君に会わせて」


「美結様・・・」


「お願い」


返事の代わりに、一柳さんの困った表情が返ってくる。