トントンと、病室のドアを軽くノックする。


泣けば目が腫れるということを忘れていた私は、案の定目をパンパンに腫らしママに思いっきり笑われた。


でもなんか逆に笑われて、心が晴れた気がする。


落ち込んでたままの心じゃ、愛人には会えないから。


「はい」


病室の中から、愛人の落ち着いた声がする。


「笑顔で・・・」


そう呟いて、ドアをガラッと開けた。


最初に飛び込んできたのは、窓から注がれるキラキラした太陽の光。


広い個室には、テレビがあり丸いテーブルに一人用のソファーがふたつ。


冷蔵庫にポットもあって、備え付けの水道もある。


そんな部屋の真ん中にベットがあって、愛人が上半身だけを起こしながら本を読んでいた。


「マー君・・・」


声をかけると愛人がこっちを向いて、驚いたような表情になった。


そんな愛人に、自分なりの精一杯の笑顔を向けた。