「美結様、お身体が冷えてしまいます。これでお拭きください」


一柳さんが丁寧に畳まれたバスタオルを差し出してくれる。


「マー君は?」


「ええ、大丈夫です。安心なさってください」


不安そうな顔をして聞く私に、一柳さんは優しい穏やかな笑顔を見せてくれた。


愛人が倒れたとき、私は愛人が死んじゃうんじゃないかって、怖くて怖くてただ愛人の名前を呼ぶことしか出来なかった。


マー君、マー君って何度も呼んでも、返事はなく聞こえるのは荒い息遣いだけ。


近くを通った人が私たちの異変に気づいて、救急車を呼んでくれた。


それに乗って着いた病院で愛人はすぐに処置室に運ばれ、処置を終えた愛人は今は病室で休んでいる。


病院の誰かに連絡を受けたのか、すぐに一柳さんが駆けつけてくれた。


「マー君に会えますか?」


受け取ったタオルで軽く濡れた部分を拭くと、私は一柳さんに聞いた。


「今はお休みになられています。そっとしておいていただけますか?」


「・・・はい」


愛人の様子が気になって気になって仕方がなかったけど、一柳さんの言葉に素直にうなずく。