特に予定はないし軽い気持ちで沙奈にうなずくと、隣の席からガガーと椅子を引く大きな音が聞こえた。


その音にびっくりして沙奈と同時に隣を見ると、愛人が席を立ったところだった。


その愛人が私たちの方を向いて、沙奈と視線を合わせる。


「えっと・・・」


今まであまり愛人と関わりのない沙奈は突然のことに戸惑いの表情を隠せず、目があちこちに動いている。


「うっうるさかったかな？」


「別に」


「あーじゃあ、雑誌見たいとか？」


「違う」


沙奈の動揺っぷりに笑いをかみ殺し、助け船を出そうと口を開いたとき、愛人がとんでもないことを言い出した。


「悪いけど、今日は美結、俺と出掛けることになってるから」


「へーそうなんだ・・・えぇぇー」


沙奈が叫んだのと同時に、私はバッと愛人の方に顔を向けた。


一瞬二人の目が合ったのにも関わらず、愛人はなにも言わず教室を出て行ってしまった。


出掛けることになってる？私と愛人が？