ガタっと音を立てて、誠さんが椅子から立ち上がった。


「僕は、人に説教をされるのが大嫌いなんだ」


「ヤッ!」


左の手首を、ギュッと握られる。


怒鳴るわけじゃない。


低くて抑揚のない声が、逆に恐怖を誘う。


「ごめんなさい」


そう小さな声で言うのがやっとだった。


「いや、こっちこそ」


冷静になった誠さんは、慌てたように握っていた手をほどいた。


「生意気なこと言って、ごめんなさい」


急いで部屋を出た。


「怖かった・・・」


部屋を出たとたん、一気に身体の力が抜けて、その場にヘナヘナと座り込んだ。


「なにやってんだろ、私」