「ああ」


「誰が帰って来たとか、気にならないの?」


「別に」


「そんなもん?」


「そんなもん」


「ふ~ん」


そんなことを話していると、誰かの足音がこっちに向かってるのが聞こえた。


「あっ、来てたんだ」


「おじゃましてます」


帰って来たのは、誠さんだった。


「大学帰りですか?おかえりなさい」


「美結さんに、おかえりなさいを言われるなんて、思いもしなかったよ」


誠さんが、ふわりと笑った。


「あっえっと、そうですね」


その笑顔がたまに笑う愛人に似てて、なんだか照れてしまう。