「この話はこっちから断ることにする」


「えっ?」


「会社のことに、美結を巻き込むわけにいかない」


「でも、パパの立場は?」


「そんなこと、心配しなくていい」


「会社にだって、大きなダメージを与えるでしょ?」


「この話はまだ、始まったばかりだ。白紙に戻しても、なんのダメージもない」


パパはそう言い切った。


「でも・・・」


もし私が婚約するって言ったら、それで話は上手く進む?


婚約するって言ったら、パパの役に立てる?


「美結、余計なことは考えなくていいのよ」


「ママ」


私の頭の中を見透かしたように、ママが優しく私に声をかけた。


「美結は、婚約なんかしない。ねっ、龍矢」