「サボの家は大きな病院なのは知ってる?」


私はこくりと頷きました。

以前、サボが自分から言っていたのを思い出します。


「サボのお父さんは腕利きの外科医で、お母さんはなんてことない普通の人。
その二人の間にサボともう一人、サボのお姉さんがいるんだ。


サボのお母さんは松子さんって言って、ずば抜けて美人って訳では無いけれどその笑顔から優しさが滲み出てるような人だった。
僕も数えるぐらいしか会ったこと無いんだけどね。

でも松子さんは昔から体が弱かった。
病弱ですごく色が白かったのを覚えてる。

それでサボが中学一年の時、松子さんは亡くなったんだ。
原因は、単なる風邪だった。
なんてこと無い風邪に体の弱さが拍車を駆けたのが原因だった。

そして皮肉にも松子さんの手術を担当したのが、サボのお父さんの佐兵衛さんだったんだよ。

サボはそれから佐兵衛さんのことを毛嫌いするようになった。
前に“あいつは母さんを殺した”って言ってたよ。」


私はそれを聞いて涙が出そうになりました。

けれどぐっとこらえてシーナの話を聞き続けます。


「それからサボは古いアパートに一人暮らしを始めて、自分でお金を稼ぐようにもなったんだ。
“あんな奴に養ってもらう筋合いは無い”って言ってさ。


でもサボが家を出た理由はもう一つあって、前にサボに好きな人がいるって言ったの覚えてる?」


私は記憶を辿りそのことを思い出しました。


「その好きな人ってのが紗代子さん、正真正銘血の繋がったサボのお姉さんなんだ。」